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山口絵理子氏インタビュー

第三講座にて講演
途上国から世界に通用するブランドをつくる 株式会社 マザーハウス 代表取締役社長 山口絵理子氏
「途上国」という言葉で一括りにされた場所にも素晴らしい資源と可能性があることを伝えたい。それが、マザーハウスの使命です。私たちは、途上国にある工場で、現地で採用したスタッフと同じテーブルに向かい合い、同じ目線に向かって、一つ一つ丁寧にもの作りをしています。同じ目線、それは、お客様の心を動かす商品を「途上国発のブランド」として胸を張ってお届けすることです。よりよい社会をつくるために情熱をかたむける一企業の活動が、今まで「貧しさ」という暗闇の中で見過ごされてきた途上国に、希望の光を灯すことを証明したいと思います。
≪プロフィール≫
1981年埼玉県生まれ。小学校時代イジメにあい、その反動で中学で非行に走る。強くなりたいと高校の「男子柔道部」に入部、女子柔道で日本のトップクラスに。偏差値40から受験勉強3ヶ月で慶応義塾大学に合格。
大学のインターン時代、ワシントン国際機関で途上国の矛盾を感じ、アジア最貧国の一つ、「バングラデシュ」に渡り、日本人初バングラデシュ大学院に進学。必要なのは施しではなく先進国との対等な経済活動という理念で23歳で起業を決意。
フジサンケイ女性起業家支援プロジェクト2006 最優秀賞受賞

>> 公式サイト「マザーハウス」
>> ブログ「Eriko Blog」
株式会社 マザーハウス 代表取締役社長 山口絵理子氏
(インタビュアー : 株式会社 船井総合研究所 橋本 勇太)
裏切りや絶望......それでも情熱は絶えることはなかったここは、自分たちが成長できる場だと思ったから

■ 「途上国から世界に通用するブランドを作る」を企業理念に、バングラデシュとネパールでものづくりをされていますが、途上国に対しては、どのような思いで取り組んでいるのですか?

バングラデシュに初めて渡ってから、5年目になります。正直、最初はかわいそうという思いもありました。しかし、その後、2年目以降は裏切られたり、つらい思いをしたりという経験もして、今は自分たちが成長できる場だと思っています。

例えば、これまで作ってきたバッグの素材であるジュートを現地で見つけた時も、自分を成長させてくれた経験でした。ジュートは、日本のレジ袋のように、バングラデシュではどこにでもある素材でした。でも、「なにかあるんじゃないか」という思いで素材を探していた中で、ジュートと出会うことができたのです。

素晴らしい資源と可能性があると思った

■ バングラデシュの自社工場は、山口社長の念願だったそうですね。立ち上げまでにも苦労をされたそうですが、どんな思いで工場を作っていったのですか。

「いつか自社工場を」と、ずっと思っていました。マザーハウスは小さい規模ですがSPA(製造小売業)モデルなので、店から工場への情報を流す仕組みづくりに力を入れました。

工場のオープンは2008年の6月です。その後、同年の12月5日には4倍の広さの場所に移りました。

今は、バングラデシュで一番いい労働環境だと思っています。例えば、マザーハウスの工場では、掃除、新人のトレーニングも工員が自主的にやっています。これは現地ではとても珍しいことです。

自社工場では日本向けに物を作っていることの誇りを持ってほしいと思っています。そのために、現地に行ったときは、「みんなは選ばれた人たち」「マザーハウスは他と違う」という話を常々伝えています。

マザーハウスの活動の意義を理解してもらうために忘れてはいけないのは、バングラデシュの人は「社会性」の意味がわからないということです。実績がすべてなのです。社会貢献のような話は途上国の人にとっては、そこまで重要なことではありません。実績があって初めて社会性を理解してもらえるのです。

だから、現地で特に意識して伝えていることは、「オーダーはお客様があってはじめて入ってくる」という話です。そのために常に情報共有が必要なので「お店に来た方からこんな声があったよ」という情報を、毎週水曜のビデオチャットなどを使って共有しています。

■ 今年、バングラデシュに次いで、新たに取り組んでいるネパールについての思いもお聞かせいただいてもいいですか。

バングラデシュで生産していたときから、もともと次の国に行きたいという思いはありました。アフリカの国も検討して、うまくいかない経験をしたこともありました。そんな中、アジアでバングラデシュの次に貧しい国であるネパールに行き着いたのです。

マザーハウスの活動は、途上国と先進国の関係を壊すことが目的です。だから、元々バングラデシュだけで活動するつもりはなかったのです。

お客様の心を動かす商品を「途上国発のブランド」としてお届けする

■ まさに、「途上国から世界に通用するブランドを作る」という理念を形にするための活動なのですね。 さて、マザーハウス様の取り組みは、その社会貢献性だけでなく、優れた小さなSPA(製造小売業)モデルという点でも注目を集めています。そんなビジネスモデルは、どうやって作っていったのですか。

大手のSPA会社には専門の企画チームがいます。しかし、マザーハウスのような小さなメーカーは、型紙起こしから、ミニチュアサンプル、本サンプル作りまでを1人がしなくてはなりません。その上で、サンプルを日本でスタッフが使ったり、テストマーケティングとしてお客様の声を反映させて直したりと試行錯誤を重ねる点が、他社との違いです。

また、実際に市場に出した商品についても、お客様の意見を店舗のスタッフがちゃんと吸い上げることを大事にしています。実際に声として上がったものだけでなく、マザーハウスの店舗のスタッフは毎日、お店に来た人が買ったものも、手に取ったけど買わなかったものも日報で報告します。

これは、「ひとりよがりのブランドにならないように。」という思いがあるからです。お客様がほしいものを作らないと、マザーハウスの理念に合いません。

そうしたスタンスで企画をしてきた成果として、カタログ通販の「通販生活」とコラボレーションして作ったバッグは300個限定なのに、それを大きく超える発注が来たこともありました。

ただ、今でも「絶対売れる」という商品が売れなかったりすることはあります。だから、お客様の声が大事なのです。お客様の声には、型(「リュックはないのか」等)、素材(「レザーのものがほしい」等)、機能(「ポケットをつけてほしい」等)など、様々な意見があります。これを集約して、企画をしていきます。

■ SPAモデルづくりには、お店やデザインだけでなく、実際にバッグを作っていく工場とのやりとりも大事になりますが、マザーハウス様ではどんなことをしているのですか。

自社工場を作るまでは、提携先の工場と一緒に生産をしていたのですが、自社工場を作ってから出てきた問題もありました。

例えば、素材の調達に時間がかかることです。革なら2~3週間、ジュートなら3~4週間かかります。したがって、発注してから素材を集めていては、お店に届くのがずっと先になってしまいます。

すばやく市場に商品を投入するためには、在庫リスクを持って、素材を自前で仕入れる必要がありました。最初はロットの問題もあってできなかったのですが、今は納期を守るために、敢えて在庫を持つ形に切り替えました。

また、SPAというモデルは、販売側(日本)からは「細かく発注したい」、生産側(バングラデシュ)では「まとめて発注してほしい」というように、要望がぶつかります。

したがって、定番品とシーズン品(限定品)で生産工場を分けました。定番品は量をこなせる協力工場、限定品は高い品質を確保できる自社工場という分け方です。更に細かくは、プレマーケティングをもとに、ラインの確保数を傾斜配分していきました。

2009年はネパール生産の立上げが最大のテーマ

■ 最後に、マザーハウス様の今後のビジョンをお聞かせいただいてもよろしいですか。

山口絵理子氏著書「裸でも生きる」

2009年の1年間は、ネパール生産の立ち上げが最大のテーマとなります。ネパールにある素材を使い、それのよさが活きるものを作ることを進めていきます。そして9月にはネパール商材の店を立ち上げることが目標です。そのためには、120アイテムが必要で、デザインと生産をこれから進めなくてはなりません。4月からはネパールに住み込みで進めていきます。

バングラデシュでは、ジュート以外の素材も含めて、総合的にバッグを作っていきます。

そして、2010年は世界に出店エリアを広げて行きたいと思っています。


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