福島正伸

プログラム第2日目基調講演にて講演 株式会社アントレプレナーセンター 代表取締役 福島正伸氏

日本全国各地で、アントレプレナーという起業化育成のサポートを進めてきた福島正伸さんの活動は早や23年を迎え、その集大成のひとつと言える「夢(ドリーム)プラン・プレゼンテーション」が2007年12月に初めて行われた。

日本各地から熱い情熱をたぎらせている若者、ビジネスマンが集い自分達の夢の発表、プレゼンテーションを行い、500人満員の会場を感動に包んだ。

決して既に成功「した」人でない、今夢に向かって、今成功に向かって突き進んでいる「現在進行形」の彼らこその焦りと不安、しかしそれ以上の人の持つ無限の可能性が伝わってくるのが、このイベントの醍醐味だ。

アントレプレナー=起業家の育成というと、とかくビジネスモデルの構築や事業の収支計画に終始しがちだ。しかし、福島さんの事業は、氏の「夢しか実現しない」の言葉どおり、まず自分自身の夢を、熱い思いを形にし、その思いの共感者を集めることを始まりとしている。

>> 公式サイト「株式会社アントレプレナーセンター」
>> ブログ「夢しか実現しない」
福島正伸
1958年7月28日生まれ。1988年3月に、株式会社就職予備校(現アントレプレナーセンター)設立。大手企業の社内研修や日本各地で起業化育成のための講演、コンサルティング活動を行っている。著書に、『どんな仕事も楽しくなる3つの物語』(きこ書房)、『小さな会社の社長のための問題解決マニュアル』(PHP研究所)、『メンタリング・マネジメント ~共感と信頼の人材育成術』(ダイヤモンド社)他多数。 <
「悩むときに悩ませないといけないと思う、悩むときには悩んでもらったほうがいいんです。」

■ 多くの若者と日々接している福島さんですが、最近感じることはありますか?


福島氏 最近の若者の傾向として、「決められない症候群」というものを私は感じています。僕は、ずっとこの起業家育成の仕事をしてきましたが、それこそ事業の開始当初、今から20年以上前には、起業家育成という言葉すらもなかったですが、その頃は何かやりたい人っていうのはだいたい「何か」やりたいものを持っていたように思います。ほんとにやりたい人、しかも「やりたい何か」がわかっている人しか私の起業化育成セミナーに来なかったんですね。

でも今は何かしたいけど、何をしたらいいのかわからない人達も大勢セミナーに来るようになった。それでも東京以外の地方ですと、わりと自分で考えさせると自分で決めることができます。例えば農業をやるとか、お父さんがこの事業をやっていたという理由でやるテーマについてはあまり悩まないんです。でその先のやりかたで悩むことが多いですね。お金がないとか、商圏が小さいとか。

けれど東京の人は、最初の「何か」を決められないんですよ。能力がある人ほど、環境が恵まれているほど、選択の幅が広すぎて悩んじゃうんだと思います。彼らにとっては、今やっていることも素晴らしい、でも何かしたくてセミナーに来る、でも決められない。しかもたとえ一旦決めても、決めた瞬間からすぐには本気になれない。「これじゃないんじゃないかな」なんて迷っちゃうわけです、それで時間だけが過ぎる。

迷って迷って、また戻って、あっちこっち行ってまた戻ってくる。私の感覚では、どうせ最初決めたところに戻ってくると思ってはいるのですが、かと言って最初からそう言ってしまってもダメなんです。悩むときに悩ませないといけないと思う、悩むときには悩んでもらったほうがいいんです。そして、一度決めてもまた悩むかもしれない。それを助けるために僕達はできるだけたくさんのヒントを用意してあげて、本人が決めるためのきっかけとしてもらえることに力を注いでいます。


■ 本人が自分で決めるということが大切なんですね。


そうです。本人に悩んでもらい、苦労も本人がする。だってそうしないと、人間は困難にぶつかったときに逃げ出してしまうんです。それから人間は一回教えられると、教えられグセがついてしまい、また教えてもらおうと思ってしまう。そうすると起業して、一人になったときに止まってしまうんです。

困難に遭遇したとき、逃げないで自分で切り拓いていける、そんな能力が必要なんです。教えれば教えるほど、その教わったことはできるようになるけど、不測の事態に陥ったときに対応できないんです。でも考えてみてください、経営とは基本的に不測の事態しかないのです。不測の事態の連続です。したがって不測の事態に自分で考えて自分で決めて、自分で行動しないといけない。選ぶのは経営者、あくまで自分で決めるというのが大切だと思います。


■ 決めるということは実は私も苦手なのですが、福島さんはすぐに決断をしていますよね。例えば一度入社された会社を1ヶ月で退職されたり(笑)。その決断力はどこから来ているのでしょうか?


退職の話ですね、あれは正式には入社した初日に辞めると決めて、2日目に辞表を出したんです。でも上司に言ったら、君はまだ一日目だからそんなことは考えなくていいといわれ、結局辞表を受け取ってもらえなかったんです。でも会社に行くのは勝手に辞めてしまって、正式退社は4月25日になったということですね。決断力があるかという話になると、私はむしろ逆で、決断力がなかったのだと思います。

例えば大学を卒業して新しく会社に入社された方は、何かを決めたはずなんですよ。仮に自分の夢は何で、将来自分はこれをやるっていうことは決められなくても、たとえば「この会社でいいわ」とか「とりあえずここで3年やるか」とか、前向きでないにしても、なにかしらの納得があったから働くことができたと思うんです。

でもぼくにはこの納得感というものが全くなかったんです。だから働けなかったんです。「しょうがない」とか、「ここでまずは勉強しよう」とか、「とりあえずいいや」とか、「何年はここでやっていこう」とか、「この会社で何かを見つけてそれをやろう」とか。何でもいいと思うのですが、納得感がないと人は働けないと思うんですよ。だから私はそれすら決められなかった人間なんです。働くとか生きるということが私にはわからなかったんです。

あの当時はまだ高校時代から続く悩みをいつも抱えていましたね。私は学生の時も、なんで受験勉強をするんだろうとか、そういうことに疑問を持って考えていました。「何のために」を考え出すと、もうダメなんですよ。何のため俺はこんなにがんばってるんだろうって、訳わからないですよね。だから、そのころはよく友達となんで生きるのかということについて議論したりしていて、一度は警察にも声かけられました。

まあ真夜中の公園で若者グループが集って、朝方まで議論していたので、何か悪さでも企んでいるように誤解されたのでしょう。「お前達、いったいこんなところで何をしているんだ」と注意されて、でも僕たちはただ真面目に「生きる」とか「生きる意味」について議論していただけなんですけどね。



ホントに何にも通用しないんですよ、自分という人間以外は。

■ 今の事業に至ったきっかけは何だったのですか?

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実は会社を辞めてから少しの間は何一つうまくいかなかったですね。あのときはとにかく自分を追い込みたかった。できるところからやればいいではなくて、全てを捨てて何にもないところから、世の中に裸ん坊になって、何もない状態から自分で何かやってみたいと思ったんです。学歴もお金も信用もない、そんな状態からやってみたかったんですよ。その中から見えるものがあるんじゃないかって。

とにかくゼロの状況から、ゼロの環境から、今まで多少ですが学歴とか、家族の支援とかそのようなものがあったと思うのですが、ホントに全て無しでやってみたかった。そこで何かを見つけたかった、だから自分探しの事業だったんです。でも、そうやっていざやってみると、ホントに何にも通用しないんですよ、自分という人間以外は。



自分の中にどこか納得感がないものってのはつらいと思いますよ。

それで結局あるとき、何でもいいんだってことに気づくんですよね。何でもいいんだって、何してもいいから自分らしく生きればいいってことが。もちろん世の中にはルールがあるので、自分勝手という意味ではないのですが、自分らしく生きればいいと。うまくいってもいかなくてもやり続けることができるものをやりたかったんですね。それを考えたときに、自分が一番悩み、苦しんだこと、「就職」というところで何かやっていこうと決めたんです。

自分と同じようには他の人が悩んでほしくないな、解決したいなと思ったんですよ。それが就職予備校だったんですよ。それまでっていうのは、最初に興した企業「ビーボード」がそうであったように「事業として成り立つもの」を考えていたんですよ。でも、事業として成り立つってことは第一義的なテーマではないはずなんですよ。仕事ってのはうまくいくとか利益が出るっていうのは第一義的なことではないと思うんです。

何のために、なぜやるのかっていうことこそが一義的なテーマのはずなんです。だから商売とか働くっていうのは、一義的なテーマがしっかりできないといけないんです。そうしないと苦しいことや嫌なことがあるときに折れちゃうときがあるわけですよね。

ところが自分の中に、どうしてもやりたいとか諦められない気持ちがあって、苦しくてもやりたいって気持ちがあると、変な話かもしれないですが、余裕ができるんですよ、心の中に。迷わない、動じない、揺れないんですよ。もちろん、やっていく以上苦しむ度合いも多くなるんですが、でもその分感動があるんです。楽をしようと思ったら、そういう事業の仕方ってのはあると思いますよ。でもそれは実はつらいんです、ほんとに自分の中にどこか納得感がないものってのはつらいと思いますよ。

そしてその次に考えたのは、今度は自分が会社を作るってことに悩んだ経験を踏まえ、創業とか新規事業とか、そのへんを始めたんです。面白いことに、当時、このふたつ、就職と創業は絶対利益にならないって言われていたんですよ。周囲からは「利益出ないのにどうするの?」と聞かれたのですが、私は「今はわからないけど、でもこれが僕の人生のテーマなんだって。」そう答えていました。



単に人に理解してもらうとか、人を納得させるということではなくて、自分の生き様を見せる

■ ご自身の経験に照らし合わせ、とても深いところに事業の理念があるのですね。


よく人から言われるのが、「福島さん、こんなに長く経営しているのによくぶれないよね?」って言われるのですが、ぶれるも何も、僕自身の生きるテーマがそこにあるってことを20代のときに見つけてしまったので、それ以外ないんです、選択が。もちろん事業としてやることは魚屋だったり、ラーメン屋だったり、駐車場の管理人だったりすることもあるかもしれない。けど、例えば駐車場の管理人だったら、それは僕の人生のテーマに合った駐車場の管理人なんです。

世の中でこうしたらうまくいくよっていうことをやりたいんじゃなくて、自分に合ったやり方で、駐車場の管理人をやりたいんですよ。大切なことは「自分自身の生きるテーマ」が根底にあることだと思います。だから今、起業家育成で教えているプレゼンテーションも同じなんです。単に人に理解してもらうとか、人を納得させるということではなくて、自分の生き様を見せる場なんですよ。こうすれば儲かりますよっていうと、怖い人や変な人が集ってきちゃんうんですよ(笑)。

だから新規事業のプレゼンテーションは、その人の人生観とリンクしてないといけないって私は思っています。それは世の中の流れがこうだとか、今こういうものが流行っているとか、それで始めるのは事業じゃないんですよ。なんで私がそう思うかと言うと、簡単です。そういうのはうまくいかないとやめちゃうからです。だから私は、うまくいかないことがあってもやめない、成果、結果が出るまでやめないその理由はなんですかってことを最初に問うんですよ。

感動と共感のプレゼンテーション
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昨年東京で初めて夢(ドリーム)プラン・プレゼンテーションを行ったのですが、参加された多くの方に満足してもらえたようでした。プレゼンテーションなんてものは発表者の方にとっては実はあまり経験がないのですが、なのにものすごくかっこいいことを話すんですよ。びっくりするくらい正々堂々としている。
「失礼ですけど、なんで田舎から出てきた人達が東京のビジネスマンの前で、500人という大勢の人間の前で、あんなに正々堂々と喋れるんですか?」って聞かれました。

私は、それはもちろん発表者の努力もあるんだけど、やっぱり一番の理由は、自分の中にある納得感があるものを、自分という人間を見てもらっているからだと思います。したがって遠慮することもないし、うまくやる必要性もないし、ただ一生懸命やるだけで伝わっているのだと思います。



隣に手をつないで歩いている人がいれば、どんな風が吹いても大丈夫

■ 人間の成長にとって大切なことは何だとお考えですか?


人って、いろんな意味でいるだけでお互いに影響を与えているんだろうなって思います。いろんな人との出会いや他人との接触、関係の中でいろんなことに気づいていくんだろうなって思います。だから人生において出来事も大事なんだけど、誰といるかが私は重要だと思います。例えばある出来事として、すごく苦しいことがあって夜逃げしちゃう人もいれば、一方ですごく苦しい経験をしても、それを次に活かして成果を出す人もいますよね。

それって出来事でなくて、そばに誰がいるかだと思うんですね。そばに誰もいないと、人間ひとりぼっちのときは、つらくなると逃げちゃうんですよ。でももしそばに自分を信用してくれる人間がいると、やっぱり耐えられるんですよ。

人間ってね、すごく強いんですよ。人と人がつながったときは強い、逆にひとりぼっちのときはすごく弱い。手をつないで歩いているのと一緒で、一人ぼっちで歩いていたらすぐ吹き飛ばされちゃいますけど、隣に手をつないで歩いている人がいれば、どんな風が吹いても大丈夫、耐えられる、そう思います。



どんなに小さなことでも賞賛する、助け合う、讃美する

■ 今回の夢☆実現フォーラムのテーマ、働くことで成長したい人達に向けて、メッセージをお願いします。

どんな事業や仕事をやるにしても、その意味を自分がどう考えてやっているかがすごく重要だということをお伝えしたいと思います。つまらない仕事って世の中にないし、極端に言えば電話一本の受け答えで自分の未来も会社の売上も全部変えていけると思うし、僕はなにげないひとつひとつの仕事が全て未来をつくっていて、自分の人生も作ってると思うんですよ。
同じ働くにしても、いやいや働くのか、そこに意味を見出して働くのかで全く仕事の楽しさも変わるし、クオリティも変わると思うんですよ。

だから仕事って何をやるにしても、社会に貢献しているって感じることが大事なんですね。どんなに小さなことでも賞賛する、助け合う、讃美するっていうのは大切で、そのような場を作ることも重要だと思います。

何かひとつ目標を達成したらすぐに次の目標に向かうのでなくて、何かそこでみんなでハッピーになる時間を作って、それでまたみんなでハッピーになろうよって言って、次の目標に向かっていく、喜びを増やしていくのが仕事であり、それを実現できるのが会社だと思います。


(2008年4月 インタビュー中田/撮影皆川)

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